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2026.10.29

マンション管理

原状回復の具体例 退去時のトラブルを防ぐために

<原状回復とは>

 

以前の記事で、賃貸物件の退去時に問題となる「原状回復」について、普通に暮らしていて発生する「通常損耗」や時間の経過による「経年劣化」は、原則として借主の負担にならないことをご説明しました。

 

では、実際に退去するとき、壁紙の黒ずみや画鋲の穴、床のへこみなどは、借主が費用を負担しなければならないのでしょうか。

 

今回は、退去時によく問題となる具体例を取り上げ、国土交通省の「原状回復ガイドライン」ではどのように考えられているのかを見ていきます。

 

<壁紙>

 

壁紙は日光で日焼けが生じたり、画鋲でカレンダーやポスターを貼っていることも多いと思います。どこまで原状回復の対象になるのか、見てみましょう。

 

①冷蔵庫裏などの黒ずみ

 

冷蔵庫を移動させると、壁紙が黒くなっていることがあります。いわゆる電気ヤケです。

 

冷蔵庫は、いま普通の生活をするうえで必要な家電です。そのため、冷蔵庫を通常どおり使用したことによって生じた壁の黒ずみは、「通常損耗」と考えられ、原状回復の対象にはならないとされています。

 

②家具やポスター等によってできる壁紙の日焼け

 

家具やポスターで光があたらないところと、光があたるところで、壁紙の色が変わってしまうことがあります。

 

光によって壁紙が変色することは、普通に生活していても発生するものと考えられます。

 

そのため、「通常損耗」であり、原状回復の対象にならないと考えられます。

 

③画鋲やピンを刺した穴

 

カレンダーやポスターを壁に掛けるために画鋲やピンをさすこともあります。

 

カレンダーやポスターを壁に掛けることは通常のことであり、普通の生活でも良くあることです。

 

そのため、多くの場合は「通常損耗」であり、原状回復の対象にならないと考えられます。ただ、重量物を掛けるためのしっかりとしたネジの穴があいている場合など、壁の下地の交換が必要な場合には、原状回復の対象になることもあります。

 

④タバコのヤニによる変色、におい

 

タバコのヤニで部屋全体の壁紙が変色していたり、においが残ってしまう場合があります。

 

その場合、普通の生活でも生じる変色やにおい、つまり「通常損耗」を超えており原状回復の対象となる場合があります。とくに、室内での喫煙が禁止されている場合には、用法違反にもなります。

 

 

<床>

床は、人が歩いたり、家具を置いたり、傷や汚れがつきやすいところでもあります。

 

①家具を置いていたところのヘコみ

 

カーペットやクッションフロアでは、重量のある家具を置いておくと、ヘコみが残ってしまうことがあります。

 

家具を置く、ということは普通の生活で生じることであり、置いたことによるヘコみは、「通常損耗」であり、原状回復の対象にならないと考えられます。

 

②ペットの傷痕

 

ペットを飼っていると、床にツメの傷痕がつくことがあります。

 

ペットを飼っていたことによって生じた傷やにおいは、普通の生活で生じる傷やにおいを超えていることが多く、原状回復の対象となる場合があります。 とくに、ペットが禁止されている物件では、用法違反にもなります。

 

<鍵の取り替え>

 

借主が鍵を紛失しており、入居時に預かった本数の鍵を返すことが出来ない場合は、原状回復のため、鍵の交換費用がかかります。

 

借主が鍵を紛失していない場合は、鍵の交換は次の入居者をスムーズに募集するための賃貸人側の事情と考えられますので、賃貸人が負担して行うべきものと考えられます。

 

<ハウスクリーニング>

 

退去時に、ハウスクリーニング費用が引かれることもみられます。このハウスクリーニング費用は借主負担なのでしょうか。

 

借主が、普通に生活していればこのくらいは掃除している、という程度の汚れであれば、ハウスクリーニングは次の入居者をスムーズに募集するための賃貸人側の事情と考えられますので、賃貸人の負担となるのが原則です。

 

逆に、借主が部屋の手入れや掃除を怠っていたような場合には、ハウスクリーニング費用は借主負担とされることがあります。

 

なお、契約書に退去時のハウスクリーニング費用を借主が負担するという特約がある場合には、その特約の有効性が問題となります。

 

 

<原状回復が借主負担の場合>

 

汚れや破損が通常損耗を超えるような場合は、借主負担で原状回復をしなければいけません。ただ、その場合も、時間が経過することで建物や内装の価値が低下することを考慮する必要があります。

 

国土交通省の「原状回復ガイドライン」では、壁紙は、6年経つと経年劣化により、残った価値を1円として計算することとされています。

 

つまり、原状回復ガイドラインの考え方では、借主の負担で壁紙を貼り替える場合でも、例えば壁紙を張り替えてから3年程度経過していた場合には、だいたい壁紙としての価値は半分になっていると考えて、壁紙の張り替え費用のうち半分を借主が負担する、という計算をします。

 

また、破損した部分の壁紙だけ貼り替えると、新しいところと色が合わないので全部貼り替えるのか、ということも問題になります。

 

これも「原状回復ガイドライン」では、㎡(平方メートル)単位で貼り替えが望ましいが、一面までは借主負担での貼り替えもありうる、としています。

 

<まとめ>

 

このように、原状回復は、単に「傷や汚れがあるから、借主が修理費用を負担する」というわけではありません。

 

まず、その傷や汚れが通常の生活によって生じる「通常損耗」なのか、それとも借主の故意・過失などによって生じた「通常損耗」を超えるものなのかを判断する必要があります。

 

借主の負担となる場合でも、どの範囲まで修繕する必要があるのか、さらに、経年劣化によって価値が下がっている分をどのように考慮するのか、という問題があります。

 

賃貸人はできるだけきれいに直してほしい、借主はできるだけお金をかけたくない、と立場の違いからトラブルが起こりやすいところです。賃貸人として原状回復費用を請求する側も、借主として請求された側も、契約内容や原状回復の明細を確認して、専門家の意見を聞いてみてください。

 

※国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

 

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

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