2026.02.12
離婚・相続・遺言
相続土地国庫帰属制度

土地を相続した場合、必ずしも「財産」としてプラスになるとは限りません。「遠方に住んでいて管理が難しい」「売却や賃貸もできず維持費ばかりかかる」など、土地の相続が大きな負担となるケースも少なくありません。
このような場合に、相続した土地を国に引き渡すことができる制度として、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」に基づく「相続土地国庫帰属制度」が創設され、令和5年4月から運用が開始されました。
本稿では、その概要や手続の流れについて解説します。
1 相続土地国庫帰属制度の創設経緯

これまでも、不要な土地を相続した場合には「相続放棄」という方法によって土地を相続しないという選択が可能でした。しかし、相続放棄は相続財産全体を放棄する制度であり、不要な土地だけを選んで放棄することはできませんでした。その結果、相続した土地が活用されないまま長期間放置され、何代にもわたる相続を経るうちに所有者が多数に及び、複雑な共有関係となるケースが増えていました。こうした土地は売却や管理が極めて困難で、所有者の特定すら難しい「所有者不明土地」として全国的に問題視されるようになりました。
このような状況を受け、所有者不明土地の発生を防ぐために相続登記の義務化が導入され、あわせて相続した土地を国に引き渡すことができる新たな制度として、「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。
2 相続土地国庫帰属制度の手続き
⑴ 手続きの流れ

相続や相続人に対する遺贈によって土地を取得した人は、法務大臣に対し、その土地を国庫に帰属させるよう承認申請を行うことができます。法務大臣が、その土地が通常の管理・処分以上に過大な費用や労力を要する土地ではないと判断した場合、国庫帰属の承認がなされます。承認後、申請者が所定の負担金を納付した時点で土地の所有権が国に移転します。なお、相続等により土地の共有持分を取得した場合、共有者の全員が共同して申請を行う必要があります。また、本来申請権限を有しない共有者(法人、相続人以外など)がいる場合でも、申請権限を有する共有者がいる場合には、共有者全員で申請すれば手続を進めることができます。
⑵ 申請をすることができない土地
以下に該当する土地は、そもそも制度の対象とならず、申請することができません。
①建物がある土地
②担保権や使用収益権が設定されている土地
③他人の利用が予定されている土地
④土壌汚染されている土地
⑤境界が明らかではない土地その他所有権の存否や範囲について争いがある土地
⑶ 承認を受けることができない土地
申請はできるものの、審査の結果、以下のような土地は承認が下りない場合があります。
①一定の勾配・高さの崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地
②土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
③土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
④隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
⑤その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
⑷ 費用

相続土地国庫帰属制度を利用する場合には、審査手数料と負担金の2種類の費用がかかります。
ア 審査手数料
申請時には、土地1筆につき14,000円の審査手数料を納付します。これは申請を受け付け、法務局がその土地について審査を行うための費用です。
イ 負担金(承認後に必要)
法務局の審査で承認されると、その土地を国が今後管理するために必要な費用として、10年分の管理費を基準に算定した「負担金」を納付します。
負担金の基本額は、土地1筆につき20万円となっています。ただし、同じ地目で隣接している複数の土地は「合算して1つ」と扱うことができ、2筆以上でも負担金は基本額20万円に軽減されます。なお、一部の市街地の宅地や農用地区域内の農地、森林などについては、面積に応じて負担金が増額されます。
3 制度の利用状況

法務省が公表した令和7年10月30日時点の運用状況によれば、相続土地の国庫帰属件数は2,000件を超えています。制度創設から同日時点までの運用状況をみると、申請件数(総数)は4,556件で、その内訳は次のとおりです。
・田畑 :1,755件
・宅地 :1,588件
・山林 :715件
・その他:498件
実地調査等の審査を経て国に帰属された件数は2,145件となり、種目別の内訳は次のとおりです。
・宅地 :784件
・農用地:697件
・森林 :132件
・その他:510件
上記のとおり、相続土地国庫帰属制度は制度開始から短期間で多くの申請が行われており、不要な土地の整理手段として徐々に活用が広がっています。
4 終わりに

相続土地国庫帰属制度は、相続放棄とは異なり、相続財産のうち不要な土地のみを国に引き渡すことができる新しい制度です。相続人の負担軽減や土地の新たな活用に役立つ制度として注目されています。一方、同制度の利用にあたっては必要書類の収集や申請の要件を満たしているかの判断など、専門的で複雑な部分も多くあります。
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相続した土地の管理や処分にお困りの方、制度の利用を検討されている方は、ぜひ一度、弊所にご相談ください。

