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2024.05.31

交通事故・保険

軽微な人身交通事故に関する警察の処理の流れ

1 はじめに

どんなに安全運転を心がけていても、車を運転するときには、交通事故を起こしてしまうリスクは避けて通れません。

そして、重大な交通事故でなくとも、相手に怪我を負わせてしまう人身事故となってしまうことがあります。そのようなときは、人身事故としての警察の対応が始まるわけですが、いわゆる点数への影響や反則金など、交通事故に特有の処理の流れがあり、やや複雑に入り組んでいます。

今回は、軽微な人身事故を起こした場合に、どのような手続が進んでいくのか、その概観を見ていきたいと思います。

 

2 刑事処分と行政処分の違い

まず、交通事故の処理にあたる警察は、実は、全く別の2系列の処理手続を行っています。一方が、犯罪に対する刑事責任を対象とする刑事処分の手続であり、もう一方が、運転免許に対するペナルティを対象とする行政処分の手続です。刑事処分については、いわゆる犯罪に対する取締を行うものなので、警察は検察庁に引き継ぎを行うことになります。一方、行政処分については、警察は公安委員会に引き継ぎを行います。

このように、警察が並行して刑事処分と行政処分の2系列の事件処理を行っていることを念頭に置くと、手続を理解しやすいかと思います。

 

3 主に軽微事故の刑事処分に関する処理の流れ

犯罪が発生すると、通常、警察が捜査を行い、事件を検察庁に送ります。この原則的な流れ自体は、交通事故事件でも変わるところはありません。

もっとも、軽微な過失運転致傷等の人身事故事件や道路交通法違反の事件は、日々大量に発生することから、特有の処理の流れが整備されています。

 

 ⑴ 軽微な人身事故事件の処理

被害者の負傷の程度が低い交通事故事件については、警察が検察庁に事件を引き継ぐ際に、通常よりも簡略な書式で行うことが許される運用になっています。

具体的には、被害者の受傷の程度が全治3か月以下の事件及びこれに関連する道路交通法違反事件(ただし、逮捕があった事件等の一定の除外事由を除く)については、通常の書式より簡略な第一種特例書式が用いられます。

また、それより軽微な交通事故事件で、被害者の受傷の程度が約3週間以下の事件及びこれに関連する道路交通法違反事件(一定の除外事由を除く)については、さらに簡略な第二種簡易特例書式が用いられています。

特に、第二種簡易特例書式は、実況見分も簡略な図の作成でよいとされ、供述調書もレ点でチェックをつける定型書式が用いられており、現場の警察官の負担を減らす仕組みとなっています。

警察から検察庁に事件を引き継いだ後は、基本的には通常の事件と同様に検察庁が終局処分(起訴、略式命令請求など)を行うことになりますが、第二種簡易特例書式による送致事件は、被害者が処罰を求めない事件であれば、起訴猶予として処理されることがほとんどのようです。

 

 ⑵ 道路交通法違反事件の処理

道路交通法違反の事件については、基本的には、まず、①告知事件(交通反則通告制度の対象となる事件)、②送致事件(交通反則通告制度の対象とならず、警察が検察庁に引き継ぐ事件)に大別されます。

①の告知事件は、いわゆる「青切符」が用いられる処理手続です。比較的軽微な道路交通法の反則行為については、青切符による反則金の納付通告を行われ、一定期間に反則金を納めれば、刑事処分に進まずに事件が終了します。

 

 

4 行政処分に関する処理(点数制度)の流れ

このような刑事処分とは別に、道路交通法違反や交通事故を発生させた運転者が受ける処理手続が、いわゆる点数制度です。

点数制度は、違反行為ごとに一定の点数を付け、過去3年間の累積点数等に応じて免許の停止や取消等の行政処分を行う制度です。

事件処理を行う警察から連絡を受けた公安委員会が、違反の点数をデータに登録していき、累積点数が一定の基準に達すると、免許の停止処分や取消処分などの行政処分が行われることになります。

 

5 まとめ

以上のように、交通事故事件では、刑事処分と行政処分の別系統の処理が行われます。刑事処分と行政処分の違いを理解すると、手続の流れを理解しやすいのではないかと思います。

2024.05.07

離婚・相続・遺言

特別受益と寄与分の主張期限(令和5年4月1日施行の相続法改正)

1 特別受益・寄与分とは

親や配偶者など身近な人が亡くなった場合、故人が遺言書を残していなければ、故人の遺産について相続人らで遺産分割を行うことになります。そして、遺産分割においては、「特別受益」や「寄与分」が問題となることが間々あります。

「特別受益」とは、遺産の前渡しと評価される故人から相続人に対する贈与のことであり、「寄与分」とは、相続人が故人の遺産の維持や増加に貢献した場合に認められる当該相続人の分け前のことです。

 

2 特別受益・寄与分の主張期限

「特別受益」と「寄与分」について、従前は「いつまでに主張しなければならない」という期限はありませんでした。

しかし、令和5年4月1日に施行された相続法改正により、(相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合には)原則として故人が亡くなってから10年以内に家庭裁判所に遺産分割調停等の申立てを行わなければ、「特別受益」や「寄与分」の主張ができないことになりました。

なお、平成30年3月31日以前に亡くなった故人の遺産分割の場合は、令和10年3月31日までに遺産分割調停等の申立てを行えば、「特別受益」や「寄与分」の主張をすることができます。

 

3 最後に

「10年」と聞くと、まだまだ先のことのように感じられますが、時間が経つにつれて、「特別受益」や「寄与分」に関する資料を集めることは難しくなっていきます。

そのため、遺産分割に関するお困りごとがありましたら、お早めに弁護士にご相談ください。

 

※本記事は、令和5年12月時点の情報をもとに作成しています。

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