2024.04.05
消費者問題
無料求人広告について
1 無料求人広告の手口
最近、無料求人広告詐欺というトラブルが頻発しています。無料求人広告とうたって、会社に広告掲載の申し込みをさせ、一定期間が経過した後に、有料契約に移行したといって広告掲載料を請求するようなケースです。手口の詳細は以下のとおりです。
まず、会社に飛び込みの電話がかかってきて、「当社の求人広告にあなたの会社の求人情報を記載しませんか。掲載料はかかりません。」と勧誘されます。「無料であれば」と考えて、それに応じ、相手方から送られてくる申込書類に必要事項を記入の上、FAXで送信すると、相手方の求人サイトに会社の求人情報が掲載されます。
ところが、数週間後に、相手方から連絡があり、「無料期間が経過し、その間に解約の連絡も受けていないので、有料期間に入っている。掲載料を支払ってもらわないといけない。」と言われます。そこで、相手方にFAX送信した申込書類を見ると、たしかに、「無料期間内に解約をしないと、有料契約に切り替わる。」という記載があります。しかしながら、相手方からは無料だということしか聞いておらず、有料契約に切り替わるという説明は受けたことはありません。
2 有料契約は成立している?
この場合、たしかに、書面上は、一定期間経過後に掲載料がかかるという内容で契約が成立しているようにも思われます。
そして、会社が「被害者」となった場合は、特定商取引法や消費者契約法といった消費者保護に関する法律は、原則として適用されません。
そのため、広告掲載料を支払わなければならないようにも思えます。
3 広告掲載料を支払う必要がないと判断した裁判例
しかしながら、以下のような反論をすることで、広告掲載料を支払う必要がないと判断した裁判例があります。
①詐欺による取消し
那覇簡裁令和3年10月21日判決は、広告会社が自動的に有料契約に移行するとのルールを説明しなかったことが、沈黙による詐欺にあたるとし、契約の取消しを認めました。
②公序良俗違反による無効
東京地裁令和元年9月9日判決は、広告会社が自動的に有料契約に移行するとのルールを説明せず、広告掲載サービスの内容も明らかではない契約を、公序良俗違反として無効としました。
③停止条件不成就による効力不発生
東京地裁令和元年11月13日判決は、掲載する求人広告の内容について会社が明確に了解していないケースにおいて、求人広告の内容が確定していないため、契約の効力が発生していないと判断しました。
4 まとめ
以上のように、無料求人広告に対する裁判所の判断もバラバラであり、対応が固まっていませんが、事案によっては裁判例のように支払いをしなくて済む可能性もあります。
広告会社に対して、どのような対応をすべきかは、ケースバイケースであり、難しい判断になりますので、広告会社への対応を決めるにあたっては、弁護士への相談をご検討ください。