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2026.03.25

自治体

令和8年4月1日より改正環境影響評価法が施行されます(アセス図書の継続公開について)

1.はじめに

 

 

開発事業者の皆様は既にご存じかと思われますが、令和8年4月1日より改正環境影響評価法が施行されます。これに伴い各自治体の環境影響評価条例の中には法改正と同様の改正が予定されているものがあります。

 

2.環境影響評価法・条例とは

 

 

環境影響評価法は、大規模な開発を行う事業者が開発に伴う環境影響について事業実施前に調査・予測・評価を行い、その結果を事業計画に反映させることで環境負荷を回避低減するという、開発に環境配慮の観点を組み込むためのひとつのプロセスを定めた法律です。

 

同法が対象とする開発は高速道路、鉄道、ダム、廃棄物最終処分場、発電所、土地区画整理事業など多岐に渡り、いわゆる大規模開発としてイメージされる開発のほとんどがこの法律の対象となり得るといって差し支えありません。

 

しかし、施設の規模や能力によっては同法の適用対象外となる開発も存在します。

 

こういった法適用外の開発であっても、周辺環境に何かしらの影響を与える可能性は否定できません。

 

そこで、環境影響価法と同様の手続きを求めるべく、各地の自治体が条例レベルで環境アセスメントの制度を設けている場合があります。

 

この場合は、事業実施前の段階で条例に基づく環境アセスメントを行う必要があります。

 

この環境影響評価条例は、環境影響評価法を条例レベルに落とし込んだものであるため、環境影響評価法が改正されるタイミングで、併せて改正が行われる傾向にあります。

 

 

3.今回の注目すべき改正:「アセス図書の継続公開」

 

 

2026年4月1日から施行される改正環境影響評価法について、改正のポイントは大きく分けて2つあります。以下のリンクは環境省の作成した本改正の概要資料となります。

https://www.env.go.jp/content/000290803.pdf

 

改正環境影響評価法の要点の1つは「アセス図書の継続公開」であり、本稿ではこちらの改正について検討していきます。

 

(1) 「アセス図書の継続公開」の概要

 

 

環境影響評価法の手続の中では配慮書、方法書、準備書、評価書、報告書といった「アセス図書」が作成され、これらは一般に公告・縦覧されることになりますが、その期間には「公告の日から起算して1月間」といった定めがあり、これを過ぎた後は、事業者が任意で公表しない限りは、公文書開示請求等の方法によってアクセスするしか方法がなく、アセスに関する情報を収集する事が難しくなってしまうという課題がありました。

 

この度の改正は、アセス図書を作成した事業者の同意を得ることを条件に、環境大臣がアセス図書を継続して公開できるようにするものであり、アセス図書へのアクセスを容易にするものです(改正環境影響評価法52条)。この結果、例えば、後続開発に先行する環境アセスメントの結果を反映させることができる、あるいは、地域住民が開発に伴う環境影響に関する基礎的な情報を得ることで対話を行うための知識の土台が形成されるといった、開発にとってプラスの効果が期待できるようになりました。

 

(2)運用上の懸念

 

 

一方で、この制度がうまく機能するかについては懸念が残ります。というのも、「アセス図書を作成した事業者の同意を得ること」が条件となっており、強制力がありません。そのため、開発事業者側が同意しない限り継続公開は行われないということになります。

 

開発事業者の立場からは、環境配慮は純粋な経済合理性の面から考えてコストとみなされます。開発にとってのコストをどれだけ支払うかについては、最終的には開発事業者の判断に委ねられるものの、利益の最大化を図るのであれば、基本的には必要最低限となるでしょう。

 

そうすると、開発事業者がアセス図書の継続公開に対して同意する可能性は低いものと考えられます。

 

(3)検討

 

 

しかしながら、開発事業者にとって環境配慮は本当に避けるべきコストでしかないのでしょうか。

 

ここで、アセス図書の継続公開を例にとり、これが開発事業者にとってのメリットとなる可能性について検討してみたいと思います。

 

まず、地域住民の理解促進ということが考えられます。環境影響評価法では方法書、準備書の各段階で関係地域内における説明会の実施を義務付けていますが(環境影響評価法第7条の2、第17条)、地域住民に対し開発への理解を求めるにはこれだけでは不足する場合が多く、ほとんどの場合、開発事業者は任意の説明会を重ねることになります。こういった任意の説明会の際には、方法書や準備書といったアセス図書の内容を踏まえた説明がなされるのが望ましいと思われます。

 

説明会に参加する地域住民としても、説明を受ける前にアセス図書を確認する、あるいは、説明を受けた上でアセス図書を確認して、開発に対する理解を一層深めていくことになります。

 

このように考えると、アセス図書が継続公開されているという状況は、地域住民と対話を行っていく上で非常に好ましい状況であるといえます。

 

また、より見方を広げて、開発に関する各種法令に基づく許認可に与える影響を考えると、さらなるメリットがあるものと思われます。

 

上述の地域住民との対話にも関連しますが、アセス図書の継続公開を通じて情報を公開することは、地域住民との対話の契機となり、対話を続ける限り、開発事業者の側には「地域住民と対話を行ってきた」という事実が積み重なります。

 

開発には利害対立がつきものであるため、全ての利害関係者が開発に賛成するというケースはきわめて稀です。こういった相対立する利害が存在し、とても一つにまとまりそうもない場合に、それでも開発に関する許認可を与えるとなれば、許認可庁が真に重視するのは、「対話を尽くしたかどうか」(仮に何らかの理由で対話が途絶えていたとしても、少なくとも「対話の準備がなされていたかどうか」)という開発事業者の姿勢ではないでしょうか(※)。この開発事業者の姿勢を示す客観的な事実として、地域住民との対話の継続が機能します。

 

以上より、アセス図書の継続公開は、開発事業者が開発を進める際のいわば「追い風」となる可能性を秘めていると考えられます。

 

(※)許認可に関する法律上の要件を満たすことが前提となります。

 

4.まとめ

 

 

この度の法改正からも明らかなように、開発に環境配慮を求める流れは今後一層強まるものと思われます。

 

環境配慮が避けられないのであれば、開発事業者としては、これを単なるコストと捉えるのではなく、開発を促進する方向に利用することを考えていくべきでしょう。

2026.03.05

中堅・中小企業の法務支援

令和8年1月1日に「取適法(中小受託取引適正化法)」が施行されました

1 はじめに―「下請法」から「取適法」へ

 

 

市場経済における健全で公正な競争を守る法分野を競争法といいます。その一分野として、企業間の業務委託の場面で、中小の事業者を不当な負担から守るための法律として「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」が昭和31年に制定されていましたが、その下請法の改正法が令和8年1月1日から施行されることになり、名称も「中小受託取引適正化法(取適法)」へと変更されました。

 

今回は、主な改正点を中心に取適法の内容をご紹介したいと思います。大きな変更点もありますので、他の企業から業務を受託されている自営業や中小企業の関係者の方はもちろん、他の企業への業務の委託を担当されている方も是非最後までお読みください。

 

2 法律名・用語の変更

 

制定以来の「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」の法律名が「中小受託取引適正化法(取適法)」に変更されました。その理由は、「下請」の用語が、受託事業者の立場が低い・従属的なものであるという誤った印象を与えかねないためです。

 

同様の理由で、下請法の「親事業者」は「委託事業者」へ、「下請事業者」は「中小受託事業者」へと、それぞれ用語が変更されました。

 

 

3 規制対象の拡充

 

 

従来は、規制の対象となる「親事業者」「下請業者」に該当するかは、もっぱら資本金を基準としていました。しかし、操作が可能である資本金のみによる基準では不十分であると考えられたことから、資本金にかかわらない従業員数による規制が加わることとなりました(取適法2条7項5号6号・9項5号6号)。「従業員」とは、「常時使用する従業員」のことであり、職種にかかわらず算入されます。

 

従業員数に関して、以下のそれぞれの区分ごとの基準に該当する場合は、資本金の額にかかわらず「委託事業者」「中小受託事業者」として取適法の規制対象となります。

 

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★物品の製造委託・修理委託・特定運送委託・情報成果物作成委託・役務提供委託(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に限る。)

 

委託事業者                            中小受託事業者

常時使用する従業員300人超         個人又は常時使用する従業員300人以下

 

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★情報成果物作成委託・役務提供委託(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理を除く。)

 

委託事業者                            中小受託事業者

常時使用する従業員100人超         個人又は常時使用する従業員100人以下

 

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4 対象取引の追加 特定運送委託

 

規制の対象となる取引類型に、「特定運送委託」が明示されました(取適法2条5項)。

 

「特定運送委託」とは、事業者(委託事業者)が物品を顧客に運送して納品する場合に、その運送を他の事業者(中小受託事業者)に委託することをいいます。法改正以前は規制の対象外とされていたため、その結果立場の弱い運送業者が荷役(荷積み)や荷待ちを実質無償で行うこととなっているといった問題が生じていました。このために、取適法で新たに規制の対象とされたものです。

 

ただし、顧客への物品の運送の委託のすべてが規制対象とされたわけではなく、①販売する物品の納品、②製造を受託した物品の納品、③修理を受託した物品の納品、④作成を受託したプログラム等の情報成果物を物品として納品、のための運送を委託する場合に限られます。

 

 

5 協議に応じない一方的な価格決定の禁止

 

 

いわゆる買いたたき(給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い代金の額を不当に定めること)は法改正以前から規制されていました。取適法はこれに加えて、中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず委託事業者が応じなかったり、協議において必要な説明や情報の提供をせず、一方的に代金の額を決定したりすることも規制されることになりました(取適法5条2項4号)。

 

法改正以前は、下請事業者が親事業者に価格についての協議を無視されたり先延ばしにされる、協議もなしに価格を据え置かれる、価格を一方的に決められ必要な説明もなされない、といった事態が相次いでいると指摘されていました。このために、新たに規制されることとなったものです。

 

 

6 支払手段の規制

 

支払の遅延・先延ばしも、中小の事業者が押し付けられやすい負担です。このため、法改正以前より、支払期日は給付の受領や役務の提供の日より60日以内かつできるだけ短い期間内で定められなければならないとされていました。

 

しかし、手形・電子記録債権・ファクタリングによる支払い自体は禁止されておらず、これらの方法による支払いによって受託者が現金化までの資金繰りを負担させられるという事態が生じていました。このため、取適法では手形による支払いは禁止とし、手形以外の支払手段であって代金の支払期日までに代金相当の金銭と引き換えることが困難であるものによる支払いも禁止されることとなりました(取適法5条1項2号)。

 

 

7 発注内容の明示に電子メール等が使用可に

 

委託事業者は、発注をしたときは、中小受託事業者に対して、直ちに給付の内容、代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を明示しなければならないとされています(取適法4条1項)。この点につき、法改正以前は書面によることが必要であるとされていましたが、取適法では電磁的方法によってもよいことが規定されました。このため、電子メール等で説明することが可能になりました(中小受託事業者の同意がなくても可能です。)。

 

 

8 官庁の規制権限の強化

 

 

法改正以前は、下請法違反の取締りは公正取引委員会と中小企業庁が行うものとされており、対象となる取引の監督官庁は調査権限しか明記されていませんでした。また、公正取引委員会・中小企業庁に下請法違反の事実を通報したことについての報復措置の禁止は定められていましたが、監督官庁に通報した場合の報復措置の禁止は明記されていませんでした。

 

取適法では、委託事業者に対する監督官庁の指導・助言権限が明記され(取適法8条)、また報復措置の禁止となる通報の対象先にも監督官庁が明記されました(取適法5条1項7号)。この改正の影響は現時点では未知数ですが、監督官庁による各取引分野の実態に即した指導や助言が行われることが想定されます。

 

 

9 おわりに

 

 

以上、取適法の主な改正点を見てきましたが、事業者間の業務委託に関する取引については、この他にも契約書や注文書に何を記載するべきか、どのような場合に従来の条件を変更できるのかといった判断に専門的な考慮を必要とする場面が数多く存在します。

 

また、独占禁止法の「優越的地位の濫用」やフリーランス法による規制も同時に問題となりえます。

 

これらの規制に違反すると立入検査、勧告の公表、監督官庁による指導さらには罰金といった、企業活動に大きなダメージを負いかねない取締りを受ける可能性もあります。

 

委託者、受託者どちらの立場であっても、少しでもご不安な点があればお早めに弁護士にご相談ください。

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