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2026.06.11

中堅・中小企業の法務支援

認知症と事業承継

1 事業承継の必要性

 

日本では高齢化が進み、それに伴い、中小企業の経営者の高齢化も進行しています。そのため、事業承継は多くの中小企業にとって重要な課題となっています。

 

また、政府による調査によれば、65歳以上の高齢者のうち、認知症の割合は約12%とされており、軽度認知障害を含めると、高齢者の3人に1人が認知機能に関する症状を有しているとされています。

 

中小企業では、経営者個人に会社の意思決定権や株式が集中していることも少なくありません。そのため、経営者が認知症を発症した場合には、会社経営だけでなく、事業承継にも大きな影響が生じる可能性があります。

 

以下では、認知症が事業承継にどのような影響を及ぼすのか、また、どのような事前対策が考えられるのかについて解説します。

 

2 認知症と「意思能力」

 

まず、認知症そのものについて、民法や会社法に直接の規定があるわけではありません。しかし、認知症は「意思能力」の有無に関わる問題として重要です。

 

意思能力とは、自分の行為の意味や結果を理解し、判断する能力をいいます。一般に、意思能力を欠く状態で行った法律行為は無効となる可能性があります。

 

例えば、意思能力を欠く状態で行われた契約、株式譲渡、遺言作成、養子縁組などについて、有効性が問題となる場合があります。

 

3 認知症による会社運営への影響

 

認知症によって意思能力が問題となる場合には、会社代表者として行った取引について、その有効性が争われる可能性があります。

 

また、融資取引における代表者保証の効力が問われるなどして、融資取引そのものにも影響が及ぶ場合もあります。

 

このように、代表者の認知機能の低下は、会社運営や取引関係に支障を及ぼす可能性があります。

 

4 認知症が事業承継に与える影響

 

もっとも、事業承継との関係では、特に「株式承継」に大きな問題が生じます。

 

中小企業では、オーナー経営者が会社株式の大部分を保有していることが少なくありません。そのため、後継者へ円滑に株式を承継できるかどうかは、事業承継において極めて重要な意味を持ちます。

 

例えば、経営者が後継者へ株式を譲渡しようとしても、認知症によって意思能力を欠く状態にある場合には、その株式譲渡の有効性が争われる可能性があります。

 

また、遺言によって後継者に株式を承継させようとする場合であっても、遺言能力が問題となる場合があります。

 

その結果、後継者への株式集中ができない、経営権が不安定になる、親族間で紛争が生じるなど、円滑な事業承継が困難になる可能性があります。

 

特に、非上場会社では株式が会社支配権そのものを意味する場合も多いため、株式承継の停滞は、会社経営に重大な影響を及ぼすことがあります。

 

このように、オーナー経営者の認知症は、単なる高齢化の問題ではなく、「会社の支配権承継」に直結する重要な問題といえます。

 

5 事前の対応策

 

このような事態を避けるためには、認知症になる前の段階で、事前に対策を講じておくことが重要です。

 

具体的には、①生前贈与、②遺言作成、③民事信託、④任意後見契約などの方法が考えられます。

 

もっとも、どの方法が適切かは、家族関係、会社規模、自社株評価などによって異なります。

 

そのため、事業承継や認知症対策については、早い段階で専門家へ相談し、自社に適した承継方法を検討することが重要です。

 

当事務所でも、事業承継・民事信託・相続対策を含めた総合的なサポートを行っておりますので、お気軽にご相談ください。

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