まず、下記の代表電話番号へ
お電話ください
052-582-7373

アクセス

ブログ

2025.05.22

中堅・中小企業の法務支援

フリーランスとの契約で気をつけるべきポイント

近年、フリーランスと業務委託契約を結ぶ企業が増えています。

 

しかし、契約の不備が原因でトラブルが発生することも少なくありません。

 

2024年11月1日施行の「フリーランス・事業者間取引適正化等法」により、取引ルールが明確化されました。

 

本記事では、中小企業が気をつけるべきポイントを解説します。

 

1.書面等による取引条件の明示

 

フリーランスとの契約においては、書面または電子記録(メール・PDF等)により以下の取引条件を明示することが義務付けられています。

 

①給付の内容

②報酬の額

③支払期日

④業務委託事業者・フリーランスの名称

⑤業務委託をした日

⑥給付を受領する日・役務の提供を受ける日

⑦給付を受領する場所・役務の提供を受ける場所

⑧(検査をする場合)検査完了日

⑨(現金手段で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関する諸条件

 

2.報酬の適正な支払い

 

フリーランスとの契約において、委託した商品等を受領した日から起算して60日以内のできるだけ早い日を報酬の支払期日と定め、実際にその期日までに報酬を支払う必要があります。

 

但し、フリーランスに業務を委託した事業者が、元請から委託を受けた業務をフリーランスに再委託する場合には、一定の要件を満たせば、元請との間で定められた支払期日から起算して30日以内にフリーランスに支払うよう定めることができます。

 

3.不当な契約変更等の禁止

 

フリーランスに1か月以上の期間行う業務を委託している場合、下記の行為が禁止されます。

 

・フリーランスの責任ではない理由での受領拒否

・フリーランスの責任ではない理由での報酬の減額

・フリーランスの責任ではない理由での返品

・買いたたき

・正当な理由がない場合における指定商品の購入強制や、指定役務の利用強制

・不当な経済上の利益の提供要請

・不当なやり直しや給付内容の変更

 

また、6か月以上の業務をフリーランスに委託している場合、事業者がこの契約を解除するためには、少なくとも30日以前に、書面や電子メール等により解除の予告を行う必要があります。

 

解除予告の日から解除日までに、フリーランスから契約解除の理由の開示を求められた場合、事業者はその理由を開示する必要があります。

 

4.ハラスメント対策

 

ハラスメント行為によりフリーランスの就業環境が害されることがないよう、事業者はフリーランスからの相談に応じ、適切に対応をするため体制整備やその他必要な措置をとる必要があります。

 

事業者がとるべき措置として、以下のようなものが考えられます。

 

・従業員に対するハラスメント防止のための研修の実施

・フリーランスが利用できる相談窓口の設置や相談担当者の指定

・ハラスメントが発覚した場合の調査体制の構築

 

なお、「納期遅れ時に威圧的な発言をする」「契約外業務を強要する」などの行為はパワハラに、「個人的な接触を求める」「性的な発言を繰り返す」などの行為はセクハラに該当する恐れがあります。

 

このような行為が行われると、当該行為を行った従業員だけでなく、事業者も法的責任を問われることになります。

 

5.育児介護等と業務の両立への配慮

 

フリーランスに1か月以上の期間行う業務を委託している場合、フリーランスからの申出に応じて、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう配慮する必要があります。

 

6.法律の専門家に相談を

 

フリーランスとの契約に不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。

 

当事務所では、中小企業向けにフリーランス契約のチェックやトラブル防止のサポートを行っています。

 

適正な契約を結び、安全な取引環境を整えるために、お気軽にご相談ください。

2025.05.02

マンション管理

原状回復ってなに?退去時のトラブルを防ぐために知っておきたいこと

 

賃貸借契約が終わって部屋を退去するとき、原状回復が行われます。大家さんとしては次の入居者をスムーズに迎えるために、できるだけ部屋をきれいな状態に戻したい。そしてそのための費用は、できれば借主に負担してほしい…と考えがちです。ですが、この「原状回復」をめぐって、貸主と借主の間でトラブルになるケースも少なくありません。

 

 

<原状回復ってどういうこと?>

 

原状回復義務という考え方は以前からありましたが、2020年4月施行の民法改正で、正式に民法に規定されることになりました。民法の原状回復の考え方は、「借りたものの損傷を直す」ことです。ただし、すべてを元通りにする必要があるわけではありません。

 

たとえば…

・普通に生活していたら自然にできる汚れや傷(=通常損耗)

・時間の経過によって古くなったり劣化した部分(=経年劣化)

こうしたものについては、借主が直す必要はないと、民法に明記されています(民法第621条)。

 

<「通常損耗」ってたとえば?>

 

経年劣化はわかりやすいと思います。年月が経てば、どんな部屋も少しずつ古くなっていきます。

では通常損耗とはなんでしょう。これは、普通に使っているだけで起きる汚れや傷のことを指します。

 

たとえば…

・テレビや冷蔵庫の裏側の壁紙が黒ずむ

・フローリングに擦り傷ができる

・ドアノブなど、よく触る部分が変色する

こうしたものは、人が住んでいれば自然に起きるもので、完全には防げません。そのため、「借主の責任ではない」として、原状回復の対象から外しているのです。

 

<契約書に「全部借主負担」って書いておけばOK?>

 

そう思われるかもしれません。

「法律に特に決まりがないときは、契約で自由に決められるんだから、原状回復費用も借主負担と書いておけば大丈夫じゃないの?」と。

 

たしかに、事業用物件(店舗やオフィスなど)の場合は、そのような取り決めが有効になることもあります。

しかし、住居用のアパートやマンションを個人が借りる場合は話が違ってきます。

消費者契約法が関わってくる場合があるのです。

 

消費者契約法には、民法などのルールに比べて、消費者に一方的に不利な契約内容を無効にする規定があります(消費者契約法10条)。

通常損耗や経年劣化も借主負担で原状回復する、という契約は、民法のルールに比べて借主に不利な内容です。そのため、民法に原状回復のルールが導入されたことが影響し、契約書に書いてあっても、消費者契約法によって無効と判断される可能性が高くなったのです。

 

また、退去時の原状回復やルームクリーニングにあてるという名目で、どのような場合であっても返金されない性質の定額補修分担金といったお金を支払うという契約もありますが、これも無効と判断されるリスクがあります。

 

<無効とされるとどうなる?>

 

大家さんとしては、入居前の状態に戻して、次の入居者を募集しやすい状態にしたい、そのためのコストはできるだけ下げたい、と考えます。

しかし、消費者契約法によって無効と判断されるリスクがあります。

 

そうなると…

・トラブル対応のコストや弁護士費用が発生する

・想定よりも負担が大きくなり、資金計画が崩れてしまう

といった問題が起きかねません。

 

<トラブルを防ぐためにできること>

 

原状回復をめぐるトラブルを避け、堅実に物件を運営していくためには、契約時点でしっかりと準備しておくことが大切です。

 

たとえば…

・ 原状回復の範囲を具体的に想定しておく

・契約書の内容が法律に合っているか確認する

・特約が有効かどうか、弁護士に相談する

これらを行うことで、契約内容が無効とされにくく、借主との信頼関係も築きやすくなります。

 

<まとめ>

原状回復では、「通常損耗」や「経年劣化」は借主の負担にはなりません。

契約に書いてあっても、消費者契約法等により無効になることがあります。

トラブルを防ぐには、契約時の準備と専門家のアドバイスが重要です。

安心して賃貸経営を続けていくためにも、原状回復の考え方や法律の基本ルールをしっかり押さえておきましょう。

© 2018 taiju law office.