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2025.12.09

中堅・中小企業の法務支援

令和7年公益通報者保護法改正の主な内容と対応

1 公益通報者保護法令和7年改正の経緯

 

 

公益通報者保護法を改正する法律が、令和7年6月4日に成立し、同月11日に公布されました。改正法の施行日は、公布の1年6か月以内とされていますので、令和8年12月までに改正法が施行されることになります。

 

そもそも公益通報者保護法は、相次いだ食品表示偽装やリコール隠しなどの企業不祥事を背景として平成16年に制定されましたが、通報が十分に利用されなかった反省から、令和2年に通報者への保護を厚くする内容での法改正がされました(施行は令和4年6月)。

 

もっとも、令和2年法改正の後にも、通報者の探索がなされるなど通報者保護が不十分な事例や、通報を受けた企業の体制が不十分で企業不祥事の抑止に結びつかなかった事例が散見され、公益通報者保護制度の実効性は十分と言えない状況でした。

 

そこで、同制度の実効性をさらに高めるために、令和7年改正がなされるに至りました。

 

2 令和7年改正の主な内容

 

 

今回の改正の主な内容は以下のとおりです。

改正項目 具体的な改正内容
事業者の体制整備の徹底 公益通報対象業務従事者指定義務に違反する事業者(常時使用する労働者の数が300人超に限る)に対する内閣総理大臣(消費者庁長官へ委託)の権限として、立入検査権限、勧告に従わない場合の命令権を新設し、命令権、立入検査への拒否等に対する刑事罰を新設
通報者の範囲拡大 公益通報者の範囲に、事業者と業務委託関係にあるフリーランス(業務委託関係終了後1年以内のフリーランスを含む)を追加
通報を阻害する要因への対処 ・事業者が、労働者等に対し、正当な理由がなく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めること等によって公益通報を妨げる行為をすることを禁止し、これに違反してされた合意等の法律行為を無効とする

・事業者が、正当な理由がなく、公益通報者を特定することを目的とする行為をすることの禁止を法律に明文化

通報者への不利益取扱いの抑止・救済の強化 ・通報後1年以内の解雇又は懲戒は公益通報を理由としてされたものと推定する(民事訴訟上の立証責任転換)

・公益通報を理由とする解雇又は懲戒について、刑事罰を新設

 

3 事業者に必要な対応

 

 

令和7年改正法は、令和8年12月までの施行が予定されており、本原稿執筆時(令和7年9月)においては、未施行です。

 

もっとも、常時使用の従業員が300名を超える事業者においては、現行法において、内部通報窓口の設置等の体制整備が義務化されています。したがって、かかる事業者において、内部通報窓口が未設置の場合には、早急に設置することが必要です。

 

また、既に設置している場合でも、令和7年改正法の施行までには、既存の制度を法改正に対応した形へ修正する必要があります。施行までに、改正法に対応した法定指針や指針の解説の改訂が見込まれていますので、これらの改訂に注目し、専門家のアドバイスを受けながら制度の修正をするという対応が重要です。

 

他方で、常時使用の従業員が300名以内の事業者においては、令和7年法改正の前後を通じて、内部通報窓口の設置等の体制整備義務は、努力義務にとどまります(法的義務ではありません)。そこで、未設置は法律違反にはなりません。もっとも、内部通報窓口の設置は、通報をきっかけとして企業自身が自浄作用により重大不祥事を防ぐことにつながるという点で企業にとって大きなメリットをもたらし、従業員や取引先にとってコンプライアンス意識の高い企業という高評価につながるという積極的意義を持っていますので、法的義務でなくとも内部通報窓口の設置を検討することは企業にとって有効な選択肢であると考えられます。

 

さらに、内部通報窓口を設置するに際しては、社内での内部窓口を設置する方法だけでなく、法律事務所等の社外に外部窓口を設置する方法、双方の窓口を設置する方法があります。通報者の視点から見ると、社内の内部窓口には通報しにくいけれど、社外の専門家の窓口であれば通報しやすいと考える場合もありますので、外部窓口を設置することは、公益通報(内部通報)制度の実効性を高める一つの方法と言えます。

 

 

当事務所には、内部通報窓口の制度設計や法改正に応じた修正、法律事務所が外部窓口となることにつき、多くの実績がありますので、関心のある経営者の皆さまは、是非一度、ご相談ください。

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